アメリカ出身のアーティスト Lachlan Turczan(ラークラン・ターザン) は、光・水・音といった自然要素を素材に、人間の知覚を揺さぶる作品を手がけています。とりわけ、霧や水面といった“不安定な自然”を投影面にするという大胆な発想で、空間とエネルギーの新しい関係性を描き出す作風が注目されています。
自然を「スクリーン」にするという発想
Turczanのインスタレーションは、私たちが「投影面」として想像する壁や建築物とはまったく異なります。彼が舞台に選ぶのは、海辺の霧、水面、風、湿度といった、常に変化し続ける自然そのもの。レーザー光や高出力LEDを用いて、水や空気の粒子に直接光を投影することで、空間と光が物理的に反応し合う動的なアートを生み出しています。
見えないものを見せる光の建築
風が吹けば、光は揺れ、霧が濃くなれば像がぼやける。Turczanの作品は、あえてコントロールできない自然環境を味方につけ、一瞬ごとに表情を変える“光の建築”を描き出します。それはまるで、光が物質としての“かたち”を持ち、環境と対話しているかのよう。

彼はこう語ります:
「光が物質的な永続性を持つとき、私たちは触れられるものと触れられないものの境界を再定義することになる。そこには、物質ではなく、エネルギーと知覚によって成立する“空間”の未来がある。」
テクノロジーと自然の融合
Turczanの光は、ただ美しいだけではありません。レーザーを使った霧のカーテンや、屋内のインタラクティブな光の柱など、環境や空間と連動するマルチセンサリーな表現で、鑑賞者の五感を刺激します。
彼のアートは、「自然の再解釈」であり、「空間の再定義」。光と海、エネルギーと身体、技術と感覚。そのすべてが交錯するインスタレーションは、プロジェクションマッピングの未来に、静かで力強い問いを投げかけています。
Lachlan Turczan(ラークラン・ターザン)
アメリカ出身のアーティスト。光・水・音といった自然要素を用いたインスタレーション作品を展開し、環境と知覚の関係性を探求している。レーザーや高出力LEDを用い、水面や霧、空気などに投影することで、空間そのものと動的に反応し合う光の構造体を創出。近年はGoogleとのコラボレーションによる彫刻作品「Lucida」など、国際的な舞台で活動を広げている。
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