毎年、世界のビデオマッピング公募やコンペティションの動向を整理して発信してくれている Jérém Oury 氏。その2025年度版となる最新分析「LIST OF INTERNATIONAL VIDEO MAPPING OPEN CALL & CONTEST 2026」が公開されました。 このレポートを手がかりに、現在の国際シーンの変化を見ていきたいと思います。
コンペティションからオープンコールへ
近年、プロジェクションマッピングフェスティバルでは
- コンペ形式
- オープンコール形式
- キュレーション形式
への移行が進んでいます。
この変化には理由があります。
キュレーション中心の構成は、アーティストへの適切な報酬設計がしやすくなるという利点があります。まだ若い芸術分野であるプロジェクションマッピングにとって、持続可能な制作環境を整える意味では重要な流れです。
しかしその一方で、コンペが減ることは、新人クリエイターにとっての登竜門が減ることも意味します。
現在第一線で活躍する多くの作家が、コンペをきっかけに国際舞台へ進出したことを考えると、この変化は決して小さくありません。
ヨーロッパ:依然として世界の中心地
ヨーロッパでは、伝統ある主要コンペティションが引き続き強い存在感を持っています。
代表的なイベントとしては
- Video Mapping Festival(リール)
- SCHLOSSLICHTSPIELE Karlsruhe
- Zsolnay Light Festival
- Genius Loci Weimar
などが挙げられます。
特に東欧地域は近年活発で、
- LightUp Festival(ルーマニア)
- LUNAR Festival(ブルガリア)
- Portal Festival(Elektrick.me)
など新しい動きも見られます。
iMapp Bucharestは依然として国際的なトップレベルの競技大会として機能しており、複数の国際フェスの受賞者が集まる象徴的な場となっています。
アジア:ネットワーク型の成長が加速
アジア地域では、中国・東南アジアを中心に活動の広がりが見られます。
特に注目されるのは
- Chongqing Light Festival
- Asia Mapping Art Contest
- Bangkok Design Week
- Singapore Night Festival
などの動きです。
また東南アジアでは、ALIGHT(ASEAN Light Network Conference)といった地域連携の試みも始まっています。
こうしたネットワーク型の成長は、アジアが単なる参加地域から発信地域へ移行していることを示しています。
さらに2026年には東京で1minute Projection Mapping Competitionが新しい建築スケールで再始動予定であり、国際的にも注目されています。
アメリカ大陸:都市型フェスの広がり
北米・中南米では都市空間と連動したフェスティバルが増加しています。
代表例としては
- Let’s Glow SF(サンフランシスコ)
- BLINK(シンシナティ)
- LUMA Projection Arts Festival(ニューヨーク州)
- Digital Graffiti Festival(アラバマ)
などがあります。
またメキシコ、ブラジル、グアテマラなどでも新しいフェスティバルが次々と生まれています。
The Mapping Societyによる巡回型ビデオマッピングミュージアム構想などもあり、コミュニティ主導の動きが特徴的です。
表現の変化:ライブマッピングの登場
最近注目されている新しい形式として、
建築をDJのビジュアルステージとして使用する「ライブマッピング」
があります。
これは従来の上映型作品とは異なり、リアルタイム性を持つパフォーマンスとしてのマッピングです。
プロジェクションマッピングが「映像作品」から「空間ライブ表現」へ拡張していることを示す動きと言えるでしょう。
次の課題:批評とメディアの不在
世界のフェスティバルを俯瞰すると、もうひとつ気になる点があります。
それは、プロジェクションマッピングを専門的に論じるメディアや批評の不足 です。
また
- 審査員の固定化
- 選考傾向の均質化
- 女性リーダーの不足
といった構造的な課題も指摘されています。
プロジェクションマッピングが芸術として次の段階へ進むためには、
記録する人
分析する人
評価する人
の存在が不可欠です。
専門メディアの成立は、この分野の成熟に向けた重要なステップになるかもしれません。
プロジェクションマッピングは今も世界中で進化を続けています。
その変化の中で、コンペティションの役割もまた、新しい意味を持ち始めているのです。










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